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学芸員資格取得特定プログラム-先輩からのメッセージ-

堀部 美有さん(教育学部第四類造形芸術系コース・2020年度入学)

実習先:広島県立美術館
実習期間:2023年8月21日から2023年8月25日まで(5日間)

堀部1.jpg【プログラムに登録しようと考えた動機】 
 私がこのプログラムに登録したのは、「美術教員以外の進路の選択肢も増やしておこうかな」という軽い動機からでした。実際に受講が始まると、学芸員の専門性の深さと業務の幅広さに興味がどんどん膨らみ、最後の館園実習まであっという間に過ぎていきました。結果的に造形芸術系コースで専攻している美術教育にも博物館の授業が活きると実感したことは何度もあり、様々な学びを得られました。

【プログラムや実習で学んだこと】
 プログラムでは美術館を含む博物館について、その機能や目的、運営などを学芸業務の視点から学びました。心地よい鑑賞空間の裏で、作品を虫害や温湿度の変化から守り、常に作品と鑑賞者ファーストで仕事をする学芸員の業務は予想以上に複雑でした。講義を通して、日常でも美術館で作品の素材や展示室のつくりなどに目が行くようになり、作品の周りを含めて鑑賞するようになりました。堀部2.jpg

 また、学外実習では北九州の科学館や福山市の美術館などに訪れました。分野を越えて見学することで普段とは違う視点で博物館を回ることが出来ました。特に北九州市立いのちのたび博物館は、多くの恐竜の骨格標本に圧倒されて実習時間が足りなくらいでした...!

 4年次の夏休みには広島県立美術館で5日間の実習を経験させていただきました。県美の作品を用いて作品取り扱い実習を行ったり、学芸課の方の前で教育普及のためのワークショップや広報案をプレゼンしたりするなど、緊張することもありました。その分、学芸員の進路を具体的に考える貴重な機会ともなりました。実習では各館ごとの立地や財政と運営の関係性、作品保存や管理の違いを知り、多様なローカルルールのもと、いかに博物館が地域と密接な存在であるのかを実感しました。特に県美は地元の芸術家研究に力が入っており、実習期間は学芸員の方に直接、収蔵由来などを質問出来たため、教育普及という美術教育の面だけでなく、美術史を扱う自分の研究にとっても勉強になりました。

 最後にプログラムで個人的にメリットを感じたこととして、他の専攻の学生との交流を挙げたいです。履修する学生は私のような教育学部から文学部、理学部、生物生産学部など様々な学生が集まるため、授業内のディスカッションがいつも新鮮で楽しいです。プログラムがきっかけで授業外に他学部の学生と一緒に美術館に行ったり、研究を教えてもらったりし、自分の視野が広がりました。それは実習中も同様であり、他大の学生と話すことで良い刺激をもらいました。

【後輩へのメッセージ】
 主専攻との両立を不安に思ったのは最初ばかりで、始まってみれば講義自体も楽しく、学生同士で補いあいながらプログラムを進めていくことが出来ました。もし学芸員や美術館、科学館などという言葉でなくても、学部以外の学びや研究活動と地域連携、教育と社会、など少しでも興味を惹かれるものがあれば登録をおすすめします。

 皆さんの大学生活が多くの楽しい刺激に溢れますように!


堀邊 隆晴さん(教育学部第三類国語文化系コース・2020年度入学)

実習先:旧田中家鋳物民俗資料館、市立枚方宿鍵屋資料館
実習期間:2023年8月16日から2023年8月21日まで(それぞれ3日間、計6日間)

 大学1年の頃、教養教育科目の授業で美術館に行き、そこで美術館の空間に魅力を感じました。これが、学芸員資格取得特定プログラムを受講したきっかけです。

 僕は、それまで博物館や美術館に行ったこともなかったし、芸術・美術に関心があるわけでもありませんでした。それでも、直感的に、ここに関心・学びがあると思いました。自分自身で何か誇れる学びを得たい!と思っていたことも、受講を決めたきっかけの一つです。どちらも叶えることができ、受講してよかったと思っています。

 学芸員資格取得特定プログラムでは、簡単に言えば博物館についての知識や、学芸員としての技能を学びます。博物館と一口に言っても、美術館や民俗資料館、動物園などが含まれるので、授業で学ぶ知識は多岐に渡ります。なので、授業では知っている分野よりも知らない分野を学ぶ方が多いという状況でした。僕は博物館の知識が皆無だったので、なおさらです...。

 それでも、裏を返せば、多岐にわたるからこそ、自分にとって新しい知識を得られる機会が増えました。言い換えるなら、自分が知らなかった、興味を持ってこなかったことについての理解が深まり、「興味のないこと」が減っていきました。学んだすべての分野に対して「興味を持つ」ということは難しいですが、「わずかでも知っている」「少し考えたことがある」状態にすることはさほど難しくありません。このプログラムは、0を1や2の状態にする機会が多くあり、僕はそこに価値を感じ、学びのモチベーションにしていました。僕の主専攻は国語教育で、学芸員資格取得特定プログラムと離れた分野だからこそ、それがより実感できたのだと思います。

 もちろん、元々興味があったり、自分の専攻する分野と重なったりすることもあります。例えば、教育普及の場としての博物館の役割を考えることが多くあります。教育学部に所属していた僕にとって、博物館を学校教育・生涯教育の場として最大限活かすためにはどうすればよいか、このプログラムを取ったからこそじっくり考えることができ、専攻する分野に対する新たな視点を得られました。堀邊.png

 学芸員資格取得特定プログラムでは、博物館実習があります。僕は地元の民俗系の資料館に行きました。その資料館は、来館者が非常に少なく、1日に一人も来館者が来ないという状況でした。来館者と関わったり、展示解説を実際にやってみたりできるものと思っていたので、衝撃を受けたことを覚えています。来館者の対応という点では、学べることが多くはありませんでしたが、実習生だけでミニ展示の企画を行わせてもらったり、資料館・学芸員が抱えている課題についてお話を伺ったりと、本当に貴重な体験ができました。それまで授業で小規模の博物館・資料館が抱えている課題について聞いてきましたが、実際に目にすることで、より実感が伴いましたし、これまで得た知識で、自分がどのように関わっていけるのかを改めて考える機会になりました。

 正直、始める動機は何だっていいと思います。必ずしも学芸員資格取得のために受講するという動機でなくてもいいと、僕は思っています。このプログラムでは、自分の知らない分野の理解や、自分の専攻している分野に対する新しい見方を得られることも多く、刺激的なものでした。学芸員資格の取得ももちろん魅力的ですが、学芸員資格取得特定プログラムはその過程の学びもおもしろいです。直感的にでも、学芸員・博物館という領域に魅力を感じたら、受講してみるといいと思います!



東覚 ゆきさん(生物生産学部水圏統合科学プログラム・2020年度入学)

実習先:しものせき水族館「海響館」
実習期間:2023年5月30日から2023年6月13日まで(15日間)

 私は幼稚園の頃から水族館の飼育員になることが夢でした。夢を叶えるための力を身に着けるために、生物生産学部水圏統合科学プログラムに進学し、愛する魚についての研究を日々行っています。水族館は人気の職業であるため求人が少なく、募集人数もかなり少ないため、狭き門とされています。そんな水族館の求人について調べていると、「学芸員資格必須」であることが少なくなく、水族館飼育員になるためには学芸員の資格を取らなければならない、と考えたことが、私が学芸員資格取得プログラムに登録した動機です。

 プログラムが始まる前は、自分の興味がある分野以外の科目に対して、あまり前向きになれませんでした。しかし、いざ始まってみると土器や掛け軸の取扱い方を体験したり、液浸標本のホルマリン液の入れ替えや化石のレプリカを作成するなど、ただ聴くだけの講義ばかりではなく、実際に体験する内容が多く、楽しい学びが多くありました。また、様々な学部の学生で構成されているため、ほとんど初対面の人ばかりです。加えてグループワークが多いため、初めて会った人と意見交換をしなければならず初めは緊張しましたが、授業回数を重ねると次第に慣れてくるので、グループワークが楽しくなっていきました。色んな人と新たな関わりを持てるのは、このプログラムの良いところの1つであると思います。

 学芸員資格取得特定プログラムでは、受講生がそれぞれ興味のある博物館に実習に行く博物館実習2という科目があります。私は山口県下関市にある、しものせき水族館「海響館」に2週間ほどお世話になりました。毎日の給餌、水槽掃除だけでなく、フグやアンコウの搬入や新しい展示水槽の設営、投薬など様々な業務を体験させていただきました。(実習期間中にさかなクンから贈られたフグが搬入されたときはびっくりしました。)また、実習担当の方から「自分が海響館の飼育員であった場合、どのような展示をするか」といった課題が独自にだされ、この課題を考える上で、展示のテーマや伝えたいことに適した生物の選出や、水槽の大きさ、形状、水温や開催する時期、場所など非常に細かいところまで考えなければならず、大変ではありましたが勉強になりました。この実習に行かなければ分からなかったことを多く学ぶことができ、2週間という長い期間でしたが、あっという間に終わったという感覚が強く、非常に充実した実習であったと思います。私は実習に参加する前は、水族館飼育員の仕事を体験することで、理想と異なる面を知ってしまったら嫌だな、と考えていましたが、実習が終わったあとは、とても大変な仕事ではあるがやりがいがあり、これからも目指すべき仕事であると思えました。


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 今まだ学芸員資格取得プログラムに登録するか悩んでいる人は、ぜひ登録をおすすめします。多分、皆さんが思っているよりきっと楽しいです。プログラム開始前はあまり面白くなさそうだな、と考えていた私が、全て終わった後にはやってよかったなと思えるぐらいには良い体験ができます。


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